和歌山県の地方紙に『日韓交流朗読劇「沙也可の見た空」』という小さな記事を発見した。
和歌山県のとある市民団体が「沙也可(サヤカ)」をテーマにした朗読劇を上演するのだという。
「沙也可」というのは安土桃山時代の戦国武将で、和歌山県を根城にした傭兵集団「雑賀衆」の一員だったという説もあり、この市民団体ではその説を採用しているようだが、実際は本当にいたかどうかも分からない謎の人物である。
韓国側の主張によれば、沙也可は秀吉の朝鮮出兵に参加した日本の武将だったが、戦いの名分に疑問を感じ、また現地で触れた朝鮮文化に崇敬の念を抱くようになり、ついに3千人の部下を引き連れて朝鮮側に寝返って、日本軍を相手に戦うようになったのだという。
しかし日本側にそのような記録は一切なく、日本のマトモな歴史学者の間では、沙也可の実在性は完全に否定されている。突っ込み所満載の怪しい話だから当然だろう。
例えば、いくら敵国の文化に崇敬の念を持ったとしても、そんな程度のことで同胞を裏切れるものなのか。その裏切りによって、本国に残された親族が(部下たちの親族も含め)過酷な扱いを受けるのは明白だ。朝鮮文化などという糞みたいなもののために故国の親族を捨てるなどキチガイ沙汰であり、あまりに現実離れしていてリアリティが感じられない。
そもそも3千人もの部下を率いる有力武将が朝鮮側に寝返ったとすれば、戦線を揺るがす大事件であり、日本側に一切の記録が残っていないということはありえないはずだが、もちろん日本側にそのように記録はまったく残っていない。つまり真っ赤な嘘なのである。
ちなみに敵に寝返った兵士が皆無だったわけではなく、例えば本隊から逸れて飢餓に苦しむなどの理由で、やむなく朝鮮側に投降し、命惜しさに協力者に成り果てた雑兵などはいたらしく、その子孫を名乗る人々の村も韓国には実在する。
そして、そんな雑兵の子孫の一部が「ウリの先祖は日本の有力武将だったニダ〜」などと駄ボラを吹き始めたのがこの珍妙な伝説の始まりであるらしい。
で、そのような怪しい物語を「雑賀衆・沙也可で街おこしの会」と名乗る団体が、セミプロの脚本家や元宝塚の団員などを起用して、朗読劇として上演するというのだが、そんなことで町おこしになるのだろうか。
なにやら町おこし以外の意図があるような気がするのだが、想像の域を出ないのでこれ以上書くのはやめておこう。ただ史実である可能性がゼロの怪しい物語であることだけは指摘しておきたい。
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沙也可(想像図)